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「チラシの裏にでも書いとけ」のチラシの裏にあたるところ

左巻キ式ラストリゾート感想、雑記

左巻キ式ラストリゾートを読みました

以前尖ったラノベ特集みたいなものをネットで見て気になって購入したわけなんですが、これが思っていた以上に良かったです

この左巻キ式ラストリゾート、タイトルでググるとやたら派手な演出(いきなり大きな文字になったり、変なフォント使ったり、唐突にマンガになったり)が目について最初はあまりいい印象を受けなかったっていうのが本音でした。

でもこの作品メタフィクションとして結構評価されていて、地雷っぽいけどメタフィクション好きだしなあと恐々としながら買ったんですね

実際読んでみると最初は過剰な演出と安易で過激な性描写にだいぶ引きましたけど、最後にはそれもしっかり意味のあることだとわかって総合的にいうとかなりの大当たりでした


この作品の注目すべき所は作者の熱量の一言に尽きます
物語の終盤、この作品の作者はオタク文化はテンプレ萌えキャラのコピーに溢れてるしオタクはアニメやゲームに逃避して現実で戦う力を手に入れようとしていないとオタク界隈を批判してくるわけですが、最後にはそれでもオタク文化が好きだといった結論で締めくくってたのがポイント高かったですね



以下ネタバレがあるので数行挟みます















この作品、純粋なミステリとしてのレベルはそこまで高いものではありません
目を覚ました主人公のいる世界が虚構世界だということは結構な序盤からかなり匂わせてきますし、おそらくこの虚構世界はエロゲの中の世界なんだろうなってことは僕は中盤の時点でわかっていました

しかしこの作品のミソは最後の方の数ページの主人公と犯人の会話にあります

ここが読者である僕ら現実を生きる人にも切り込んできてとてもメタフィクションとしてレベルが高い。

彼女達は虚構だし、創作物の中に引きこもってるだけじゃなんも生まないし不毛だという犯人に対し、それでも虚構でもなんでも彼女達との思い出は確かにあったと返す主人公
これだけ見ると陳腐なやりとりに見えますが、これがメタフィクションと上手く絡まることによって、自分が今まで見てきたアニメなどの「虚構」は無駄なものでなく思い出として自分を構成する一部になっているのだと読者に訴えかけてきて、オタクとしてとても好感がありました

現実を生きるオタクが最後にすがれるという意味でタイトルのラストリゾートがここで効いてくるのも痺れますね

この作品、オタクであるほど刺さるタイプの作品という意味では「君と彼女と彼女の恋。」あたりが近いと思います
こういう読者の経験がそのまま返ってくるタイプの 作品は破壊力(?)があっていいですね

今回はそんな感じで